卵はコレステロール値に影響する?動脈硬化との関係や1日に食べて良い個数を解説

「卵ってコレステロールが高いから体に悪いんじゃないの?」そう思っていませんか? 実は、卵とコレステロールの関係は、以前考えられていたほど単純ではありません。卵を安心して美味しく食べるための知識が身につきます。毎日の食卓に欠かせない卵について、正しい知識を身につけて、健康的な食生活を送りましょう。
卵とコレステロールの真実
卵とコレステロールの関係
卵は栄養価の高い食品として知られていますが、コレステロール含有量が多いことから、コレステロール値への影響が懸念される方もいるかもしれません。そこで、この章では卵とコレステロールの関係について詳しく解説します。
卵に含まれるコレステロールの量
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厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、コレステロールの摂取量の上限は設定されていませんが、食生活全体でコレステロールの摂取量を調整することが推奨されています。1日に卵を何個まで食べて良いかは、後ほど詳しく解説します。
コレステロールの種類と働き
コレステロールには、善玉コレステロールと悪玉コレステロールの2種類があります。それぞれ異なる働きを持つため、両者のバランスが重要です。
善玉コレステロール(HDLコレステロール)
善玉コレステロールは、血管壁に付着した悪玉コレステロールを回収し、肝臓に戻す働きがあります。善玉コレステロール値が高いほど、動脈硬化のリスクが低くなるとされています。
理想的な値
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)
悪玉コレステロールは、血管壁に付着しやすく、動脈硬化を進展させる原因となります。悪玉コレステロール値が高いほど、動脈硬化のリスクが高くなるとされています。
理想的な値
食事で摂取するコレステロールの影響
かつては、食事から摂取するコレステロールが血中コレステロール値を上昇させると考えられていました。しかし、近年の研究では、食事性コレステロールが血中コレステロール値に与える影響は、以前考えられていたほど大きくないことが明らかになってきています。これは、体内でコレステロールの合成量が調整されるためです。
ただし、飽和脂肪酸動物性脂肪に多く含まれる脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロール値を上昇させるため注意が必要です。これらの脂肪酸は、肉類の脂身やバター、マーガリンなどに多く含まれています。卵には飽和脂肪酸も含まれていますが、1個あたり約1.6gと少量です。
コレステロールの種類 | 働き | 理想的な値 |
---|---|---|
善玉コレステロール(HDLコレステロール) | 血管壁に付着した悪玉コレステロールを回収し、肝臓に戻す | 60mg/dL以上 |
悪玉コレステロール(LDLコレステロール) | 血管壁に付着しやすく、動脈硬化を進展させる原因となる | 120mg/dL未満 |
より詳しい情報は、e-ヘルスネット(厚生労働省)をご覧ください。
卵の摂取とコレステロール値への影響
卵は栄養価の高い食品ですが、コレステロール含有量が多いため、コレステロール値への影響が懸念される方もいるかもしれません。そこで、過去の研究や最新の研究結果、そして体質による影響の違いについて詳しく見ていきましょう。
過去の研究と最新の研究結果
かつては、食事でコレステロールを多く摂取すると血中コレステロール値が上昇し、心血管疾患のリスクが高まると考えられていました。そのため、卵の摂取は1日1個まで、あるいは控えるべきという風潮がありました。
しかし、近年の研究では、食事性コレステロールが血中コレステロール値に与える影響は以前考えられていたほど大きくないことが示唆されています。Jミルクによると、食事性コレステロールの摂取と血中コレステロール値の上昇には弱い相関しか見られないとのことです。これは、体内でコレステロールが合成される際に、食事からのコレステロール摂取量に応じて調整されるメカニズムが備わっているためと考えられています。
多くの研究で、1日に数個の卵を摂取しても、健康な人の血中コレステロール値や心血管疾患リスクに悪影響を及ぼさないことが報告されています。例えば、ある研究では、健康な成人が1日最大3個の卵を12週間摂取しても、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値に有意な上昇は見られませんでした。むしろ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値の増加が観察されたケースも報告されています。
体質による影響の違い
ただし、コレステロール値への影響は個人差が大きく、体質によっては卵の摂取によりコレステロール値が上昇しやすい場合もあるため注意が必要です。
特に、「コレステロール過敏群食事性コレステロールの影響を受けやすい体質の人」と呼ばれる人々は、食事性コレステロールの影響を受けやすく、卵の摂取によって血中コレステロール値が上昇しやすい傾向があります。コレステロール過敏群は、日本人では約3割程度とされています。大塚製薬のサイトでは、コレステロールについて詳しく解説されています。
体質 | 卵摂取によるコレステロール値への影響 | 注意点 |
---|---|---|
コレステロール過敏群 | 上昇しやすい | 卵の摂取量に注意する必要がある。医師や管理栄養士に相談するのが望ましい。 |
コレステロール非過敏群 | 影響が少ない | 1日に数個の卵を摂取しても、コレステロール値への影響は少ないと考えられる。ただし、バランスの良い食事を心がけることが重要。 |
ご自身の体質がわからない場合は、健康診断の結果を確認したり、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。また、卵を食べる際は、野菜や海藻、きのこなど食物繊維を多く含む食品と一緒に摂ることで、コレステロールの吸収を抑える効果が期待できます。
卵と動脈硬化の関係
卵とコレステロール、そして動脈硬化の関係は、多くの人にとって関心の高いテーマです。そこで、この章では、動脈硬化のメカニズムやコレステロールとの関連、そして卵の摂取が動脈硬化に与える影響について詳しく解説していきます。
動脈硬化とは
動脈硬化とは、動脈の壁が厚く硬くなり、弾力性を失ってしまう状態のことです。血管の内側にコレステロールなどが蓄積しプラークと呼ばれる塊を形成することで、血管が狭窄したり詰まったりします。
これにより、血液の流れが悪くなり、様々な臓器に十分な酸素や栄養が供給されなくなります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な病気を引き起こす危険因子となるため、注意が必要です。
コレステロールと動脈硬化の関連性
コレステロールは細胞膜やホルモンの合成に不可欠な物質ですが、過剰なコレステロール、特に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は動脈硬化の進行に大きく関わっています。
一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)は、血管壁に蓄積したコレステロールを肝臓へ運び、動脈硬化の予防に役立つと考えられています。つまり、コレステロールの種類とバランスが動脈硬化のリスクに影響するのです。
卵の摂取が動脈硬化に与える影響
かつては、卵に含まれるコレステロールが動脈硬化のリスクを高めると考えられていました。しかし、近年の研究では、食事由来のコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は、以前考えられていたほど大きくないことが明らかになってきています。
牛乳乳製品健康科学会議の報告によれば、健康な人であれば、1日に数個の卵を摂取しても、コレステロール値や動脈硬化のリスクに大きな影響はないとされています。
ただし、体質や生活習慣によっては、卵の摂取がコレステロール値に影響を与える可能性もあるため、個々の状況に合わせて摂取量を調整することが重要です。例えば、糖尿病や脂質異常症などの持病がある人は、医師や管理栄養士に相談しながら摂取量を決めるようにしましょう。
また、卵の摂取だけでなく、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙など、健康的な生活習慣を心がけることが動脈硬化の予防につながることを忘れてはいけません。
コレステロールの種類 | 働き | 動脈硬化との関係 |
---|---|---|
LDLコレステロール(悪玉コレステロール) | 細胞膜やホルモンの合成に必要なコレステロールを全身に運ぶ | 過剰なLDLコレステロールは酸化されやすく、動脈硬化を促進する |
HDLコレステロール(善玉コレステロール) | 血管壁に蓄積したコレステロールを肝臓へ運び、処理する | 動脈硬化の予防に役立つ |
1日に食べて良い卵の個数
卵は栄養価の高い食品ですが、コレステロール含有量も比較的高いため、1日にどれくらい食べて良いのか気になる方も多いでしょう。そこで、厚生労働省の推奨や、様々な状況における卵の摂取目安について解説します。
厚生労働省の推奨摂取量
厚生労働省は、コレステロールの摂取量について具体的な数値目標を設定していません。これは、食事で摂取するコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は小さいと考えられているためです。
ただし、飽和脂肪酸の摂取量には注意が必要で、コレステロール値を上昇させる可能性があるため、摂りすぎには気をつけましょう。卵は飽和脂肪酸の含有量は比較的少ないですが、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
1日の摂取目安
週間の摂取目安
医師の指示に従う
健康な人の場合
健康な人であれば、1日に1~2個の卵を摂取しても問題ないとされています。ただし、個人の体質や生活習慣、他の食品からのコレステロール摂取量も考慮する必要があります。毎日たくさん卵を食べる場合は、他の食事でコレステロールや飽和脂肪酸の摂取量を調整するようにしましょう。
コレステロール値が気になる人の場合
コレステロール値が気になる人は、週に3~4個程度を目安にすると良いでしょう。1日に食べる量を減らすだけでなく、卵黄だけを使う、卵白のみの料理を選ぶなど、工夫してみましょう。また、医師や管理栄養士に相談し、個別の状況に合わせた適切な摂取量を指導してもらうことをおすすめします。
持病がある人の場合
糖尿病や高脂血症などの持病がある人は、コレステロール値への影響がより大きくなる可能性があります。必ず医師や管理栄養士に相談し、指示に従って卵の摂取量を決めましょう。自己判断で摂取量を制限したり、逆にたくさん食べたりすることは危険です。
状況 | 1日の目安 | 1週間の目安 | 注意点 |
---|---|---|---|
健康な人 | 1~2個 | 7~14個 | 他の食事とのバランスを考える |
コレステロール値が気になる人 | – | 3~4個 | 卵黄の量を調整する、専門家に相談する |
持病がある人 | 医師の指示に従う | 医師の指示に従う | 必ず医師に相談する |
卵を食べる上での注意点
卵は栄養価の高い食品ですが、いくつかの注意点を守って食べることで、より健康的な食生活を送ることができます。ここでは、卵を食べる上での注意点について詳しく解説します。
バランスの良い食事の重要性
卵は完全栄養食と呼ばれるほど栄養バランスに優れていますが、それだけで必要な栄養素をすべて摂取できるわけではありません。他の食品と組み合わせ、バランスの良い食事を心がけることが重要です。
野菜、果物、穀物、肉、魚など、さまざまな食品をバランスよく摂取することで、健康維持に必要な栄養素を補いましょう。例えば、卵料理に野菜を添えたり、ご飯と一緒に食べるなど、工夫してみましょう。厚生労働省が推奨する食事バランスガイド「食事バランスガイド」を参考に、バランスの取れた食事を心がけてください。
調理方法によるコレステロールへの影響
卵の調理方法によって、コレステロールの吸収率や摂取量が変わることがあります。油をあまり使わない調理法を選ぶと、コレステロールの摂取量を抑えることができます。
油を多く使用する調理法(揚げ物、炒め物など)は、コレステロールの摂取量が増えるだけでなく、酸化コレステロールの生成も懸念されます。酸化コレステロールは、動脈硬化のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
卵のアレルギー
卵はアレルギーを引き起こしやすい食品の一つです。特に乳幼児は卵アレルギーを発症するリスクが高いため、初めて卵を与える際は少量から始め、アレルギー反応がないか注意深く観察する必要があります。
アレルギー反応には、じんましん、かゆみ、呼吸困難などがあります。アレルギー反応が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
また、卵アレルギーは成長と共に治る場合もありますが、治らない場合もあります。アレルギーがある場合は、医師の指示に従って除去食を続けましょう。除去食に関する情報は、消費者庁アレルギー表示に関する情報で確認できます。
サルモネラ菌への注意
卵にはサルモネラ菌が付着している可能性があります。サルモネラ菌は食中毒の原因となる細菌で、下痢、腹痛、嘔吐などの症状を引き起こします。
サルモネラ菌による食中毒を予防するためには、卵はしっかりと加熱することが重要です。特に生卵や半熟卵は避けるようにしましょう。また、卵を割った後は、すぐに調理し、長時間放置しないようにしましょう。さらに、調理器具や手を清潔に保つことも大切です。
賞味期限と保存方法
卵は生鮮食品であるため、賞味期限内に消費するようにしましょう。賞味期限は、卵を生で安全に食べられる期限です。賞味期限を過ぎた卵は、加熱しても食べないようにしましょう。
また、卵は冷蔵庫で保存し、温度変化の少ない場所に置くのがおすすめです。冷蔵庫のドアポケットは温度変化が激しいため、卵の保存には適していません。卵のパックは、尖った方を下にして保存すると、黄身の位置が安定し、鮮度が保たれやすくなります。
保存場所 | 保存期間の目安 |
---|---|
冷蔵庫 | パックのまま約2~3週間 |
常温 | 夏場:数日、冬場:1週間程度(あくまで目安であり、推奨はしません) |
上記はあくまで目安であり、JICAの食料保存に関する情報も参考に、状況に応じて適切な保存方法を選択してください。
卵に含まれる栄養素と健康効果
卵は完全栄養食品と呼ばれるほど、様々な栄養素がバランス良く含まれています。特に成長期の子どもや、健康維持に気を遣う大人にとって、積極的に摂りたい食品です。ここでは、卵に含まれる栄養素と、それぞれの健康効果について詳しく解説します。
良質なタンパク質
卵には、体を作るために欠かせないタンパク質が豊富に含まれています。タンパク質は、筋肉や臓器、皮膚、髪、爪などを構成するだけでなく、酵素やホルモン、免疫物質の材料にもなります。
卵のタンパク質は、必須アミノ酸のバランスが完璧で、体内で効率的に利用される良質なタンパク質源です。
特に卵白に多く含まれるタンパク質は、アミノ酸スコア100を誇り、体内で合成できない必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。そのため、成長期の子どもや、筋肉量を維持したい高齢者にとって、非常に重要な栄養素です。参考:食品成分データベース
ビタミンとミネラル
卵には、様々なビタミンやミネラルが含まれています。中でも注目すべきは、ビタミンD、ビタミンB12、葉酸、セレンなどです。
栄養素 | 働き | 含まれる量(Mサイズ1個あたり) |
---|---|---|
ビタミンD | カルシウムの吸収を促進し、骨の健康を維持する | 1.1µg |
ビタミンB12 | 赤血球の形成を助ける | 0.3µg |
葉酸 | 細胞の分裂や成長に関わる | 22µg |
セレン | 抗酸化作用があり、細胞の老化を防ぐ | 15µg |
コリン | 脳機能や記憶力の維持に役立つ | 約230mg |
ルテインとゼアキサンチン | 目の健康維持に役立つ | ルテイン:約270µg、ゼアキサンチン:約190µg |
参考:日本養鶏協会
これらの栄養素は、骨の健康維持、貧血予防、胎児の正常な発育、免疫機能の維持など、様々な役割を担っています。特にビタミンDは、日光を浴びることで体内で生成されますが、現代人は不足しがちな栄養素です。卵は、貴重なビタミンDの供給源となるため、積極的に摂りたい食品です。
抗酸化作用
卵黄に含まれるルテインやゼアキサンチンは、カロテノイドの一種で、強い抗酸化作用を持っています。これらの成分は、活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、老化や生活習慣病の予防に役立つと考えられています。参考:大塚製薬
特にルテインとゼアキサンチンは、目の網膜に多く存在し、加齢黄斑変性などの眼病予防にも効果が期待されています。また、卵黄に含まれるセレンも抗酸化作用を持つミネラルであり、細胞の老化を防ぐ働きがあります。
このように、卵は様々な栄養素をバランス良く含み、健康維持に役立つ食品です。毎日の食生活にバランス良く取り入れることで、健康benefitsを得られるでしょう。
まとめ
この記事では、卵とコレステロールの関係、動脈硬化への影響、そして1日に食べて良い卵の個数について解説しました。結論として、卵はコレステロールを多く含みますが、食事から摂取するコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は以前考えられていたほど大きくないことが近年の研究で明らかになっています。厚生労働省もコレステロールの摂取量の上限を撤廃しています。
卵にはコレステロール以外にも、良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルなど、健康に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。特にタンパク質は筋肉や臓器を作るのに必要不可欠で、健康維持に重要な役割を果たします。また、抗酸化作用を持つ成分も含まれており、アンチエイジングにも効果が期待できます。
コレステロール値が気になる方や持病のある方は、医師や管理栄養士に相談しながら卵の摂取量を調整することが大切です。健康な方であれば、1日に1~2個の卵を摂取しても問題ないとされています。ただし、バランスの良い食事を心がけ、様々な食品から栄養を摂取することが重要です。卵だけをたくさん食べるのではなく、野菜や魚、肉などもバランスよく食べましょう。また、揚げ卵など油を多く使う調理法は控え、ゆで卵や卵焼きなどにするのがおすすめです。
卵は栄養価の高い食品ですので、正しく理解して摂取することで健康維持に役立てましょう。この記事が、皆様の食生活の参考になれば幸いです。