卵アレルギーを持つ乳幼児のアナフィラキシー:家庭でできる予防と応急処置を学ぼう

大切な赤ちゃんが、もしかしたら卵アレルギーかも…、初めての離乳食で卵を与えたら湿疹が出てアナフィラキシーが心配…。そんな不安を抱えるママ・パパのために、この記事では卵アレルギーを持つ乳幼児におけるアナフィラキシーの予防と応急処置について詳しく解説します。

卵アレルギーの症状や原因、アナフィラキシーの危険性などを理解し、家庭でできる具体的な予防策を学ぶことで、赤ちゃんをアナフィラキシーの危険から守るための知識と行動を身につけることができます。

万が一、アナフィラキシーを発症した場合の適切な応急処置、特にエピペンの使用方法や救急車を呼ぶタイミングについても分かりやすく説明しています。さらに、加熱した卵は食べられるのか、卵アレルギーは治るのか、予防接種は受けられるのかといった保護者の皆様からよく寄せられる疑問にもお答えします。

この記事を読み終えることで、卵アレルギーとアナフィラキシーに対する正しい知識と対処法を習得し、安心して子育てができるようサポートします。

目次

1. 卵アレルギーとは

卵アレルギーとは、卵に含まれる特定のタンパク質に対して体が過剰に反応してしまうことで起こる食物アレルギーの一種です。鶏卵はもちろん、うずら卵やダチョウ卵など、あらゆる種類の鳥類の卵でアレルギー反応が起こる可能性があります。アレルギー反応は、卵を食べた後、数分から数時間以内に現れることが一般的です。

1.1 卵アレルギーの症状

卵アレルギーの症状は、皮膚症状、呼吸器症状、消化器症状など、多岐にわたります。軽度の場合には皮膚のかゆみ、発疹、じんましんなどが現れますが、重症になると呼吸困難、意識障害といったアナフィラキシー症状を引き起こす危険性もあります。アナフィラキシーは生命に関わるため、迅速な対応が必要です。

1.1.1 乳幼児における卵アレルギーの症状

乳幼児の場合、皮膚症状が最も多くみられます。具体的には、湿疹の悪化、かゆみ、じんましん、赤み、腫れなどです。また、消化器症状として、嘔吐、下痢、腹痛などを起こすこともあります。呼吸器症状としては、咳、鼻水、くしゃみ、ゼーゼーとした呼吸などが挙げられます。さらに、重症になるとアナフィラキシーショックを起こし、血圧低下、意識障害、呼吸困難などの症状が現れ、生命に関わる危険性があります。症状の出方は個人差が大きく、少量の卵でも重篤な症状が出る場合があるので、注意が必要です。

1.2 卵アレルギーの原因

卵アレルギーは、免疫システムが卵のタンパク質を異物と認識し、過剰に反応することで引き起こされます。具体的には、オボムコイド、オボアルブミン、オボトランスフェリン、リゾチームなどのタンパク質がアレルゲンとして知られています。これらのタンパク質は加熱しても変性しにくいため、加熱調理した卵でもアレルギー反応を起こす可能性があります。遺伝的な要因も関係していると考えられており、アレルギー体質の親を持つ子どもは卵アレルギーを発症するリスクが高くなります。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ乳幼児も、卵アレルギーを発症しやすい傾向があります。

アレルゲン 特徴
オボムコイド 加熱しても変性しにくい主要なアレルゲン
オボアルブミン 卵白の主要タンパク質
オボトランスフェリン 鉄結合タンパク質
リゾチーム 抗菌作用を持つタンパク質

2. アナフィラキシーの症状と危険性

アナフィラキシーは、アレルギー反応の中でも特に重篤な症状で、生命に関わる危険性があります。食物アレルギーの中でも、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツなどはアナフィラキシーを起こしやすい食品として知られています。乳幼児の場合、まだ免疫システムが未発達なため、少量の摂取でも重篤なアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。迅速な対応が不可欠です。

2.1 アナフィラキシーの症状 乳幼児の場合

アナフィラキシーの症状は、じんましんや呼吸困難など多岐にわたり、個人差も大きいため、保護者は様々な症状を把握しておくことが重要です。乳幼児の場合、症状を言葉で伝えられないため、保護者の観察力がより重要になります。

主な症状は以下の通りです。

症状の種類 具体的な症状
皮膚症状 じんましんかゆみ赤み腫れ(特に顔、唇、まぶた)、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)
呼吸器症状 くしゃみ鼻水喘鳴(ぜいめい)呼吸困難喉の腫れ声のかすれ
消化器症状 吐き気嘔吐腹痛下痢
循環器症状 めまいふらつき意識消失血圧低下ショック状態頻脈(脈拍が速くなる)、不整脈
その他 不安感イライラ痙攣

これらの症状が複数同時に、または急速に現れた場合は、アナフィラキシーの可能性が高いと考えられます。特に呼吸困難や意識消失などが見られる場合は、一刻を争う事態です。

2.2 アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックは、アナフィラキシーがさらに進行した重篤な状態で、血圧の急激な低下意識消失などを伴います。放置すると呼吸停止心停止に至り、死に至る可能性もある非常に危険な状態です。

2.3 なぜアナフィラキシーは危険なのか

アナフィラキシーは、アレルギー反応によって体内で様々な化学物質が放出されることで引き起こされます。これらの物質は、血管拡張気管支収縮などを引き起こし、全身の臓器に影響を及ぼします。特に血圧の低下は、脳や心臓など vital organs への血液供給を減少させ、生命に関わる危険な状態を引き起こします。迅速な対応が不可欠であり、症状が現れたらすぐに医療機関を受診することが重要です。

3. 乳幼児の卵アレルギーによるアナフィラキシーの予防策

乳幼児期における卵アレルギーは、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性のある深刻なアレルギーの一つです。特に、まだ言葉を話せない乳幼児は自分の症状を伝えることができないため、保護者が日頃から細心の注意を払い、予防策を徹底することが重要です。

3.1 完全除去の重要性

卵アレルギーにおけるアナフィラキシー予防の最も重要なポイントは、アレルゲンである卵を完全に除去することです。微量であっても卵が体内に入ることで、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状を引き起こす可能性があります。そのため、家庭内だけでなく、外出先でも徹底した除去が必要です。

3.1.1 家庭での除去方法

家庭では、以下の点に注意して卵の完全除去を行いましょう。

  • 卵を使った食品はもちろん、卵成分を含む加工食品も避ける。
    • 原材料表示を必ず確認し、「卵」「卵白」「卵黄」「卵殻」「卵白リゾチーム」などの表記がある食品は避ける。
    • 卵を含む食品と同じ調理器具や食器を使用しない。特に、油は卵成分が溶け出しやすいので注意が必要。専用の調理器具や食器を用意すると安心です。
  • 卵を触った手で他の食品や乳幼児に触れない。調理後や卵を触った後は、必ず石鹸で丁寧に手を洗う。
  • 卵の殻や卵白、卵黄が付着した衣類は、他の衣類とは別に洗濯する。
  • 乳幼児の手の届く場所に卵を置かない。

市販の加工食品には、思わぬところに卵が使用されている場合があります。 例えば、麺類、パン、練り物、ソース、ドレッシング、菓子類などにも卵が含まれていることがあります。原材料表示をよく確認し、不明な点があればメーカーに問い合わせるなどして、安全性を確認しましょう。

3.1.2 外食時の注意点

外食時は、以下の点に注意が必要です。

  • 卵アレルギーであることを店員に伝え、使用食材や調理方法などを確認する。アレルギー対応メニューがある場合は、その内容を詳細に確認しましょう。
  • コンタミネーション(二次汚染)のリスクを避けるため、卵料理を注文しないだけでなく、同じ厨房で調理されている可能性も考慮する。
  • 卵を使用していないと確認できた場合でも、不安であれば持ち込みの食事を許可してもらえるか相談する。
  • 外食中にアレルギー症状が出た場合に備え、エピペンなどの緊急時対応キットを必ず携帯する。

特に、ビュッフェ形式のレストランでは、他の料理からのコンタミネーションのリスクが高いため、注意が必要です。また、子どもが勝手に料理を取ってしまう可能性もあるため、十分に注意を払いましょう。

3.2 食物経口負荷試験について

食物経口負荷試験は、アレルギーの原因食物を少量ずつ摂取し、症状の有無や程度を確認する検査です。医師の監督下で行われ、アレルギーの診断や食べられる量の確認、耐性の獲得状況の確認などを目的として実施されます。 卵アレルギーの場合、食物経口負荷試験によって、加熱した卵が食べられるか、どの程度の量までなら食べられるかなどを調べることができます。医師と相談の上、必要に応じて実施を検討しましょう。

これらの予防策を徹底することで、乳幼児の卵アレルギーによるアナフィラキシーのリスクを軽減することができます。家族全体でアレルギーについて理解し、協力して安全な環境を作りましょう。

4. 乳幼児がアナフィラキシーを起こした時の応急処置

アナフィラキシーは生命に関わるアレルギー反応です。乳幼児がアナフィラキシーの症状を示したら、迅速で適切な応急処置が不可欠です。落ち着いて行動し、以下の手順を踏んでください。

4.1 エピペンの使い方

アナフィラキシーの症状が出た場合は、すぐにアドレナリン自己注射器(エピペン)を使用します。エピペンは、アナフィラキシーの第一選択薬であり、症状の進行を遅らせ、重症化を防ぐ効果があります。

エピペンの使用方法については、医師または薬剤師から十分な説明を受けてください。処方されたエピペンは常に携帯し、使用期限が切れていないか定期的に確認しましょう。また、家族や周囲の人にも使い方を周知しておくことが重要です。

4.2 救急車を呼ぶタイミング

エピペンを使用したら、すぐに救急車を呼びましょう。エピペンは一時的な効果しかないため、医療機関での適切な処置が必要です。救急車を呼ぶ際には、子どもの年齢、症状、エピペンの使用有無などを明確に伝えましょう。

以下の症状が見られたら、ためらわず救急車を呼びましょう。

症状 詳細
皮膚症状 全身のじんましん、広範囲の発赤、かゆみ、腫れ
呼吸器症状 ゼーゼーする、息苦しい、咳、声がかすれる
消化器症状 嘔吐、下痢、腹痛
循環器症状 顔面蒼白、冷や汗、意識障害、脈が弱い

これらの症状は、アナフィラキシーショックの前兆である可能性があります。少しでも異変を感じたら、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。

4.3 救急隊への情報提供

救急隊が到着したら、以下の情報を正確に伝えましょう。

  • アレルギーの原因食物(今回は卵)
  • 発症時刻と症状の変化
  • エピペンの使用時刻と使用部位
  • 既往歴や服用中の薬

正確な情報提供は、迅速な診断と適切な治療につながります。落ち着いて、必要な情報を伝えられるように準備しておきましょう。

5. 卵アレルギーとアナフィラキシーに関するよくある質問

ここでは、卵アレルギーとアナフィラキシーについてよくある質問にお答えします。

5.1 加熱すれば卵は食べられる?

いいえ、加熱しても卵アレルギーの原因となるアレルゲンは完全に除去されません。卵白に含まれるオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイドなどの主要なアレルゲンは加熱に強い性質を持っています。そのため、加熱した卵であってもアレルギー反応を引き起こす可能性があります。ごく微量の卵であっても、アナフィラキシーを起こす可能性があるため注意が必要です。 厚生労働省 e-ヘルスネット アレルギー疾患

5.2 卵アレルギーは治るの?

卵アレルギーは乳幼児期に発症することが多く、多くの場合、学童期までに耐性が獲得できるといわれています。しかし、全ての人が治るわけではなく、成人まで卵アレルギーが続くケースもあります。また、一度耐性が獲得できても、再発する可能性もゼロではありません。定期的に医師の診察を受け、食物経口負荷試験などの検査を受けることで、アレルギーの状態を把握することが大切です。

5.3 予防接種は受けられるの?

卵アレルギーがあっても、ほとんどの予防接種は安全に受けることができます。一部のワクチンは製造過程で卵を使用していますが、ごく微量であるため、重度の卵アレルギーでない限り接種可能です。ただし、ワクチンの種類によっては注意が必要な場合もありますので、必ず医師に卵アレルギーの有無と程度を伝え、相談の上で接種するようにしましょう。麻疹風疹混合(MR)ワクチンなど、卵アレルギーへの対応が確立されているワクチンもあります。接種前に医師とよく相談し、適切な対応をとることが重要です。日本小児科学会

5.4 卵アレルギーと診断されたら、何をすればいいの?

卵アレルギーと診断されたら、まず医師の指示に従って除去食を徹底することが重要です。除去のレベルはアレルギーの程度によって異なりますので、自己判断せず、医師の指示に従ってください。また、エピペンなどのアナフィラキシーに対する緊急対応薬の処方についても相談しましょう。アレルギー専門医のいる医療機関を受診し、定期的な検査を受けることも大切です。保育園や幼稚園、学校など、お子さんが過ごす場所にもアレルギーについて伝え、適切な対応をしてもらうようにしましょう。

5.5 卵不使用の商品を選ぶ際のポイントは?

卵不使用の商品を選ぶ際には、食品表示を必ず確認しましょう。特定原材料7品目である卵は、必ず表示が義務付けられています。また、「卵を含む製品と同じ工場で製造しています」といったコンタミネーション(混入)に関する表示にも注意が必要です。アレルギーの程度によっては、微量の混入でも反応を起こす可能性があります。不安な場合は、製造会社に問い合わせるなどして、より詳しい情報を確認するようにしましょう。

表示例 意味
卵が原材料として使用されている
卵黄 卵黄が原材料として使用されている
卵白 卵白が原材料として使用されている
卵を含む製品と同じ工場で製造しています 製造ラインは異なるものの、同じ工場内で製造されているため、微量の混入の可能性がある

5.6 家族に卵アレルギーの子どもがいる場合、家庭で気を付けることは?

家族に卵アレルギーの子どもがいる場合、家庭内での完全除去が重要です。卵を使用した食品を別の場所で調理したり、保管場所を分けるなど、アレルゲンが混入しないように工夫しましょう。また、調理器具や食器、ふきんなども共用しないように注意が必要です。家族全員がアレルギーについて理解し、協力することが大切です。誤って卵を食べてしまった場合に備え、アナフィラキシーの症状やエピペンの使い方についても家族で共有しておきましょう。

6. まとめ

この記事では、乳幼児の卵アレルギーとアナフィラキシーについて解説しました。卵アレルギーは、卵に含まれる特定のタンパク質に対する免疫反応によって引き起こされるアレルギー反応です。乳幼児における症状は、皮膚のかゆみ、発疹、じんましんなど様々で、重症の場合はアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。アナフィラキシーは、呼吸困難、意識障害など、生命に関わる重篤な症状を引き起こすため、迅速な対応が必要です。

卵アレルギーを持つ乳幼児を守るためには、家庭での完全除去が重要です。加工食品の原材料表示をしっかり確認し、卵を含む食品を徹底的に除去しましょう。外食の際も、卵不使用のメニューを選ぶ、もしくはお店にアレルギー対応を依頼するなど、細心の注意が必要です。また、医師の指導のもと、食物経口負荷試験を行うことで、食べられる卵の量を把握することも可能です。ただし、これは医師の指示のもとで行うべきであり、自己判断は危険です。

万が一、アナフィラキシーを起こした場合は、すぐにエピペンを注射し、救急車を呼びましょう。救急隊員には、アレルギーの原因や症状、エピペン使用の有無など、正確な情報を伝えられるようにしておきましょう。日頃からアレルギーに関する情報を整理しておき、緊急時に備えることが大切です。卵アレルギーは、適切な対応をすることで、日常生活を送ることが可能です。この記事の情報が、少しでも子育て中のご家族の安心につながれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次